大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ツ)98号 判決

所論は、被上告人の提出した書証のうちの若干のものを上告人が利益に援用したのにも拘らず、原判決の事実摘示に、右書証を上告人が利益に援用した旨記載されていないが、これは、大審院の判例(明治三三年二月一七日第一民事部判決、民録六輯二巻六〇頁)に違背するもので違法であるという。しかし、相手方の提出にかかる証拠の援用に関する右大審院の判例の趣旨は、その後の数次の大審院の判例(例えば昭和一五年(オ)第三八四号、同年一二月二四日第五民事部判決、昭和一六年(オ)第六九三号、同年一一月二九日第四民事部判決、昭和一七年(オ)第一一一四号、昭和一八年三月二七日第四民事部判決等)によって変更されたものと解すべきであるから、本件事案の判例として適切でない。のみならず、最高裁判所昭和二七年(オ)第六〇号、昭和二八年五月一四日第一小法廷判決(民集七巻五号五六五頁)によれば、裁判所は、適法に提出されたすべての証拠につき、当事者双方のため共通してその価値判断をなすことを要するものとされ(いわゆる証拠共通の原則)、実務上しばしば見られる当事者による自己に利益に援用する旨の陳述は、裁判所が職責としてなす証拠判断につき、その注意を喚起する程度の意義を有するに過ぎないとされており、当裁判所の見解もまたこれと同一である。そして、所論指摘の各書証が、いずれも被上告人の提出にかかる証拠として、原判決に記載されていることはいうまでもないし、また、原審がこれらの書証について充分に証拠判断を行なっていることは、原判文にてらし明らかである。それ故所論は理由がない。

(中西 松永 小木曾)

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